根性が必要な塩度の塩梅(あんばい)

素材の見極め

■塩度が一番大切
保存食である燻製という製品を始め、鶏炭火焼鶏せせり香草焼にしても一番難しいのが塩度を決める事だ。あらゆる製品の基本となる塩加減。どうして塩加減は難しいのか?それは人それぞれの生活環境や地域性や成長の過程で摂取してきた習慣などがそれぞれに違うということ、美味しいと感じる味覚の範囲が、塩味は狭いという事にある。あと、人によって生まれつき食塩噂好が違うという点もある。新生児にとって、甘い水は真水よりも好まれるが塩味に関しては人間の初期の成長段階では無関心で、約4ヶ月をすぎる頃から少し好みを示すように変化するという研究もある。

■人それぞれの塩度の感じ方
塩度がハッキリした方が刺激で好ましいという方と(私も程よく好きだが),まったく強い刺激が苦手という方もいて、塩度の受け取らまえ方には個人差が大きくある。私の伯父のように減塩生活をされる方には日々の生活の塩度レベルからハッキリした塩度に敏感になっている為、標準値を「しょっぱい」と感じやすい方もいる。夏と冬でも塩度の感じ方は違う。また、一般的な塩度では製品の特長がボンヤリと印象が薄印象を与えてしまう。大手さんと同じでは話しにならない。またハッキリした味が常によいという訳でもない。後追いして感じる旨みも必要な場合があるからだ。これは試作を重ねなければ分からない点もある。面白さでもある。

■生肉を焼いて塩を振った場合と、最終的に加工したものはまた違う
焼肉などで岩塩を最後に付けて味わうのと、まんべんなく塩度を浸透させスモークしたものでは塩度を舌が感じる塩梅(あんばい)が全く違う。表面で感じる塩度では加工品にならない(原材料の厚みによるが)。舌全体で感じたトータルの塩度が旨みに直結するので、旨みは塩加減が命といえる。もちろん製造には天然塩を使用しているが、安易に岩塩が肉の甘みを引き出すかと言われれば限りなく生に近い生ハムのような製品でなければ、そうでもない場合もある。生、非加熱製品、加熱製品によって塩度のとらまえ方は違ってくると思う。そこが食の楽しみ方であるとも思うが難しいところだ。

■最終段階の塩度をベストにするために試作を繰り返す
私達は味が落ち着くと表現しているのだが、例えば燻製品を釜から出してそのまま試食した時の塩度は強く感じるのに、熱殺菌まで終わり最終段階で食してみるとちょうど良い。そんな事がある。お客様に提供する最終段階でビシッと味がベストでないと意味がない。この作業は必ず行うが、原料の特性によってもその落ち着き方が異なるし、美味しくなる場合もある。(サッポロビールさんとコラボさせて頂いた、鶏いぶし手羽などが典型的な例)ハッキリした理由は肉質に関係すると思うのだが、実際に試してみて客観的に「ベストと思う塩加減」を何度も繰り返しながら最終的な商品化に入る。塩度計などの数値はあまりアテにならないのが事実だ。

■ユニークな味を目指す
最終的な判断は経営者判断になる。星の数ほど食品メーカーがある中で、私達が目指すところは「自分達が美味しいと思った落としどころを自信を持って提案する」ことに尽きると思う。平均的な美味しさという部分に落ち着いてしまっては、スモーク・エースでお買い上げ頂く意味があまりないと思う。私達も手作業で手間暇をかけて製造しているのは、大手さんには出せないユニークな美味しさをお届けしたいからだ。正直、賛否両論分かれるところもある。鶏せせりガーリックフランクはドイツの屋台で出会った、ガツンとパンチの利いた塩度の旨みを豪快にビールと一緒に召し上がってほしいというコンセプトのも元に完成した経緯がある。大人のためのフランクフルトを言わせて頂いているように、お子様には少し辛いという声もお聞きした。ポトフなどの煮込み料理に使用すると調度良いという「食べ方の提案」も怠ってはいけないと思う。

■根性を持って塩度を決める
一度GOサインを出したら二度と引き戻すことのできないのが塩度だと思う。一度決めたらお客様に必ず受け入れられる!と信じるしかないことも事実だ。その分、美味しかったというお手紙やメールや言葉を頂くと報われた感がハンパではない喜びだ。近年はアルコールを摂取しない方も増えてきているので、うまうまチキンロールのように「ヘルシーでさっぱりている」という味も大切になってきていると思う。信念を持って今後も塩梅を決めたいと思う。
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